ニジェール、心に浮かぶ風景 9

「マラリアの体験」2001年5月9日掲載

アフリカの多くの国ではハマダラ蚊という蚊が媒介するマラリアの危険にさらされて暮らすことになるのではないか。
多いのは熱性マラリアで、放置すると死亡することがあるので侮れない。毎日飲む薬、週に一回飲む薬、と二種類配布され、飲んでいた。ハマダラ蚊はどこにでもいるので、完全退治はできない。体力を維持することがいちばんの予防法と教えられた。
そうはいっても酷暑のニジェールでは、夜五・六回シャワーを浴び、それでも眠れないことがある。多くの日本人はしだいに暑さでやせていく。食べてもすぐ消耗し、栄養にならないのだ。
私がマラリアにかかったのは、体力もかなり落ち、それでも帰国数ヶ月前にできるだけのことをしたいとがむしゃらに動いていたころだった。発熱し、病院に行ったが、「鼻炎」と言われて帰された。立っているのもつらかったのに。

さらにひどくなったのは帰宅し、ベッドに横になってからだった。暑さが体を包み込むように広がっていった。起き上がろうにも体がいうことをきかなかった。ふわふわとした気分の中で「人はこうやって死んでいくのかな」とのんきに考えていた。体だけは燃えるように熱かった。意識を失いかけていたら、突然隣の柔道隊員が「大丈夫ですか」とやってきた。
どんな人が命の恩人になるかわからないものだ。気軽に寄ってみただけなのに彼は私をニアメのはずれの病院へ担ぎ込むはめになった。
病院では「また来たの」と言われた。解熱剤を一晩点滴し、それでも下がらないのでやっとマラリアと診断された。ハルファンという強い薬を処方された。心電図を撮ってからでなければ処方できないという。マラリアになることで私はニジェールの生活の総仕上げをしてしまったようだ。
今だから笑えるが、病院の食事は忘れられない。熱で食欲が落ちているのにステーキやミートソーススパゲッティが出た。生まれて初めての入院だった。