ニジェール、心に浮かぶ風景 6

「クーデター(その1)」2001年5月1日掲載

1996年の1月にニジェールで軍事クーデターが起こった。
土曜日で保育園は休みだったのは幸いだった。私は壊れた椅子や机を技術科教師の隊員に直してもらうことにしていたので、お昼過ぎに自転車で保育園に向かった。保育園は官庁街の真ん中にあった。まさにこれから銃撃戦が行われようとしているところに向っていたのだった。
官庁街に入ったところでパンパンと運動会の朝にあげる花火のような音が聞こえたが、何も気にせず走りつづけた。あれは銃声だったのか。保育園の前に来て何か変だと思った。園のガルディアンが早く早くと私を招いて門の中に入れた。車が慌てて引き返してきた。真剣な表情で走ってくる人が門の隙間から見えた。

彼らは大統領警備隊の施設に向う道から逃げてきていた。ガルディアンはぴたりと門を閉め、銃撃戦はそれとほぼ同時に始まった。私はガルディアンの家の中に入れてもらった。「何があったの」ときいても家族の人たちは首を振る。ラジオも聞こえないと言う。室内はお香の匂いした。弾丸がキュンキュンと飛ぶ音を初めて聞いた。
二時間ほど黙ってそこにいた。間段なく聞こえていた銃声が突然途絶えたと思うと、ガルディアンとその息子たちは外に出てお祈りを始めた。あとで気づいたのだが、あの銃撃戦の中でも兵士たちはイスラムのお祈りをすることを忘れなかったのだ。
私はそのあと再び銃声がおさまったときに立ち上がり「もう帰る」と無理に出てきた。何もわからずにそこにいるのが不安だった。門を出ても誰もいない。自転車を思い切りこいだ。さっきパンパンと音が聞こえたあたりで今度は激しい銃声がした。「もうだめかな」と思った。Tシャツの背中が真っ赤になるのが自分で見えたような気がした。
家に帰ると、無線から調整員が私を呼ぶ声が流れていた。ずっと呼び続けてくれていたそうだ。それがクーデターだったらしいとそのときやっと知らされた。