ニジェール、心に浮かぶ風景 2

「ニジェールでお茶を」2001年4月26日掲載

カフェと言っても、ニジェールのカフェは板を集めてきて作ったようなテーブルがひとつあって、それを角が丸くなった長椅子が囲んでいるだけのものだ。それらは夜はどこかにしまいこまれている。湯はその場で薪を使って沸かす。
首都ニアメのあちらこちらにこのようなカフェがある。自転車で移動していた私は暑さと乾燥で頭がくらくらしてくると立ち寄った。季節にもよるが、乾季から雨季にかわる四~五月ころは日中五十度以上になった。
気に入りのカフェはいくつかあったが、そのなかにタバコも商っていたところがあった。タバコのことは良く知らないが、「ゴロアーズ」というタバコが珍しかった。
ゴロアーズgauloiseはフランス人の祖先とされる「ガリア人」の女性名詞であり、「ガリア人の」という形容詞の女性形でもある。ここまでは辞書をひくとわかる。

ところで、かつてフランス領だったアフリカの国々では、学校で子どもたちが「われらが祖先ゴール〔ガリア〕人は…」と唱えさせられていたという。セネガルの女性作家ケン・ビュグルは作品「狂ったバオバブ」でこの言葉をつぶやきながらヨーロッパに留学する少女、自分自身を描いている。このことは帰国して知った。少女が見つけたのはもちろん祖先の国ではなく、白人の中に浮いている「黒人」の自分だった。
「ゴロアーズ」の箱をぼんやり眺めながら、コンデンスミルクたっぷりのインスタントコーヒー(カフェオレだ)やリプトン紅茶(ティオレだ)を飲み、そんなことは少しも知らないでいた私だった。あのときはただシャツをも刺し貫くような暑さにへばっていた。
ところで、日本でバゲットパンを探すが、ニジェールで食べたような味に出会えない。小麦粉のいい匂いがしたあのパン。帰ってみると東京には確かに食べ物があふれていた。でもなぜこのように素材の味をわざわざ消して食べるのだろう。
豊かな国なのにおいしいものひとつさがすのに苦労する。